選挙研究
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2極化と破片化
2001年イタリア上下両院選挙
池谷 知明
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2003 年 18 巻 p. 47-57,255

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抄録

本論文は2001年イタリア上下両院選挙について,選挙制度と政党システムの変容に焦点を当てて検討する。1993年に導入された現行選挙制度は,上下両院とも小選挙区と比例代表の混合制度であるが,2極化とそれによる政権交代をめざした。多くの研究者によれば,2001年選挙ではこの目的は達成されたと言える。もし選挙競合の単位を選挙連合と考えるならば,この見解は正しい。1996年選挙の勝者である中道•左翼連合が破れ,中道•右翼連合のリーダーであるシルビオ•ベルルスコーニが1994年に続き第2次内閣を組織したからである。また2大選挙連合が小選挙区のほとんどすべての議席を占めたからである。しかし,選挙競合の単位を政党とみなすならば,政党システムは2極化にはほど遠く,なお破片化が確認される。破片化はとくに小選挙区で顕著である。というのも,比例区で議席獲得が困難な小政党が選挙連合内の戦略,交渉によって,小選挙区での議席獲得が可能になっているからである。1996年選挙で選挙連合の2極化と政党の破片化が示されたが,2001年選挙はこの傾向を確認する選挙であった。

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