選挙研究
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選挙研究と日本政治の改革
ポパーの漸進的社会工学に導かれて
加藤 秀治郎
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2008 年 23 巻 p. 50-56,213

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抄録
わが国の戦後の選挙研究は, 1980年代までに戦前の文献中心の研究を脱して, 経験的研究を大きく発展させてきた。選挙学会は推進役として大きな役割を演じた。しかし, その後アメリカ政治学の圧倒的な影響下で, パターン化された調査研究が多くなる傾向が見られる。テーマ選択の重要性よりも, 成果をまとめる「効率性」が重視され, 日本政治の改革との関連性が乏しくなる傾向がある。軽視された問題の例は, (1) 衆議院の選挙制度改革の後の参議院選挙制度, (2) 衆議院と参議院の関係, (3) 地方選挙の在り方, (4) 地方での首長・議会の関係, などであり, 投票行動の量的分析のみが異様に増大している。K・ポパーの選挙制度論のような「漸進的社会工学」に沿う研究を, より強力に進めるべきではなかろうか。選挙研究における資源配分を再検討する必要がある。
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© 日本選挙学会
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