2011 年 53 巻 8 号 p. 559-563
2011年3月11日の東日本大震災大津波による福島第一原子力発電所の事故に伴い,環境へ放射性物質が放出された。原子力機構が開発した計算コードLAMERを用いて,地球規模の長期的海洋拡散計算を行い,その海水中濃度および海産物摂取による被ばく線量を推定した。
8.45 PBqの137Cs放出を仮定した場合,2012年4月以降の海水中の137Cs濃度は最大でも約23Bq/m3と計算され,大気圏内核実験に起因する事故前の濃度の14倍程度だった。その後,最大濃度は減少を続け,2023年には核実験起源と同レベルになる。一方,海産物摂取による131I,134Cs,137Csからの内部被ばくは2012年4月以降,最大でも年間1.8μSvと計算され,大気圏内核実験に起因する過去の年間線量程度であると試算された。