2023 年 65 巻 6 号 p. 378-382
温室効果ガスの削減に対し,原子力が実効的に貢献するための短中期的な革新炉導入の在り方を考察した後,わが国のエネルギー安全保障を確保する上での革新炉開発の方向性,そして放射性廃棄物の環境負荷軽減に対する革新炉のポテンシャルについて論じた。カーボンニュートラルの実現には,大規模な設備容量の確保や新規炉の立ち上げスピードが要求されるため,安全性を改善した大型軽水炉の導入が現実的である。小型モジュール炉(SMR)や高温ガス炉(HTGR)は技術革新やサプライチェーン維持にも寄与するが,それらの大規模導入はウラン資源消費をやや加速させる効果があり高速炉の導入時期にも影響を与えうる。革新炉開発には原子力固有の新たな価値創成の視点も必要である。