日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
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特集1
褐色細胞腫診断:血中遊離メタネフリン2分画測定
磯部 和正竹越 一博川上 康
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2012 年 29 巻 2 号 p. 101-103

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抄録

血中遊離メタネフリン分画測定の褐色細胞腫診断における有用性について,多施設共同研究による検討を行った。比較検討には尿中メタネフリン分画,尿中カテコールアミン分画を用いた。

ROC曲線によるAUC(曲線下面積)では最も良好な判別能を示した。感度においても98%と最も良好な成績を示した。特異度においては85%と良好ではあるが,他の項目よりは低い値を示した。

随時の安静採血で測定が可能であり,蓄尿のための入院などの手間の要らない本測定は,褐色細胞腫が疑われる患者に対して,除外診断に最も適している。

はじめに

褐色細胞腫の診断には,尿中カテコールアミン分画や尿中メタネフリン分画測定が用いられているが,測定には入院して蓄尿が必要などの煩雑さがある。

メタネフリンとはカテコールアミンがO−メチル化を受けた代謝産物であり,さらに抱合体となり排泄される。遊離メタネフリンは,抱合を受ける前の物質であり,抱合型に比較すると約30分の1と微量であり,測定にも高感度化が必要となる[]。

血中遊離メタネフリン測定は外来での随時の採血でも行うことができ,欧米では多く用いられている。本邦においては,遊離のメタネフリン分画測定は一般に行われていない。

本邦における本測定の有用性を明らかにするために,多施設共同研究を行った。本報告は解析途中段階の暫定的なものである。

参加施設

筑波大学,名古屋大学,金沢大学,関西医科大学,信州大学,福島県立医大,大阪大学,長野市民病院,東北大学,日大板橋病院,九州大学,京都市立病院,豊田厚生病院

検討症例

検討症例はいずれも高血圧などの症状より褐色細胞腫が疑われ,確定診断のため入院予定の患者である。最終的に下記のような診断名となった。

褐色細胞腫50例(褐色細胞腫39例,パラガングリオーマ6例,MEN2A5例)

非褐色細胞腫33例(アルドステロン症14例,クッシング症候群8例,副腎腫瘍8例,その他3例)

測定項目および方法

項目:血中遊離メタネフリン2分画(メタネフリン,ノルメタネフリン)

方法:上記患者より安静仰臥位30分後に採血を行い,末梢血(EDTA-2NaまたはEDTA-3K)5mLを採取し,直ちに冷却遠心分離を行い,血漿を冷凍保存(−30℃)した。

遊離メタネフリン測定にはNephrines Plasma EIA (LDN GmRH&Co.KG, Nordhorm, Germany)を用いた。尿中メタネフリン分画(メタネフリン,ノルメタネフリン),尿中カテコールアミン分画(アドレナリン,ノルアドレナリン)の値については,当該患者について各施設において測定したものを解析に用いた。

本検討は,本学倫理委員会の承認(通知番号第530号,2009年1月8日:研究責任者;竹越一博)UMIN試験ID:UMIN000001767を得,各参加施設においても当該倫理委員会の承認を得ている。

評価項目

ROC曲線:データよりROC曲線を求め,曲線下面積(AUC)を,Dorfman and Alfによる最尤推定アルゴリズムにより推定した。

感度・特異度:カットオフ値より,感度(真陽性/総褐色細胞腫患者数,特異度(真陰性/総非褐色細胞腫患者数)より求めた。

結果

ROC曲線を図1に,AUCの結果を表1に示す。大きい順に,血中遊離ノルメタネフリン(0.957),尿中ノルメタネフリン(0.956),尿中ノルアドレナリン(0.900),尿中アドレナリン(0.769),尿中メタネフリン(0.725),血中遊離メタネフリン(0.718)であった。

図 1 .

各検査項目の褐色細胞腫判別におけるROC曲線

○:血中遊離メタネフリン,●:血中遊離ノルメタネフリン,△:尿中メタネフリン,▲:尿中ノルメタネフリン,□:尿中アドレナリン,■:尿中ノルアドレナリン。

表1.

各検査項目の評価項目結果

感度については,高い順に,血中遊離メタネフリン2分画98%(49/50),尿中メタネフリン2分画86% (43/50),尿中カテコールアミン2分画70% (35/50)であった。

特異度については,高い順に,尿中カテコールアミン2分画97% (32/33),尿中メタネフリン2分画94% (31/33),血中遊離メタネフリン2分画85% (28/33)であった。

考察

血中遊離メタネフリンがなぜ褐色細胞腫診断において高感度であるかという理由は,腫瘍組織では膜結合型カテコールアミン代謝酵素のCOMTが高発現しているためであると考えられている[]。実際,血中遊離ノルメタネフリンのAUC値が最も大きく,Lenders JWMらの報告[]とも一致している。遊離メタネフリンが腫瘍由来であり,しかも持続的に放出されているためと思われる。

感度においても,血中遊離メタネフリン2分画測定が最も良好であり,本測定が除外診断に最適であることを示している。特異度においては,尿中カテコールアミン2分画,尿中メタネフリン2分画の方が優れていた。これは,Sawka AM ら[]やd’Herbomez ら[]の報告とも一致している。遊離メタネフリンの偽陽性を除くために服薬の確認やクロニジン抑制テストが有功であると報告されている[]。

カットオフ値の設定については,カテコールアミン値は,民族差,性別,体表面積などにより差があるともいわれているので[,],適切なカットオフ値を検討すべきかもしれない。

また,遊離メタネフリン2分画で陰性であった1例は,他の検査項目である尿中メタネフリン2分画および尿中カテコールアミン2分画においても陰性であった。副腎偶発腫として発見され,無症候性と診断されている。

偽陽性例はいずれもメタネフリン高値であり,副腎腫瘍2例,アルドステロン症2例,クッシング症候群1例であった。

健常群ではより低値であり基準範囲は血中遊離メタネフリンで6.0-36 pg/mL,血中遊離ノルメタネフリンで3-78 pg/mLと報告されている[]。

判別能,感度・特異度に優れ,採血のみで済むことから,本測定は褐色細胞腫診断において非常に有用であると考えられる。

謝辞

本検討の計画およびデータマネージメントにあたり,本学CREILセンター(次世代医療研究開発・教育統合センター)の多大なる協力を得ました。

【文 献】
 

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