甲状腺専門病院を除く施設で耳鼻科医が執刀する甲状腺術後の副甲状腺機能低下症の発生率が高い印象を受けるとともに,カルシウム(Ca)製剤の長期補充による弊害も散見される。当施設における術後副甲状腺機能低下症の頻度を検討し,積極的に副甲状腺およびその血流を温存する術中操作を定型化する意義について考察した。
2019年7月から2020年11月まで,住友病院耳鼻咽喉科において行った甲状腺全摘術50例について術後副甲状腺機能低下症の頻度を検討した。副甲状腺の局在と血流から機能温存を意識した術中操作および自家移植を定型的に実施した。副甲状腺機能低下は,アルブミン補正Ca値が基準値未満と定義し,一過性機能低下症の定義は術後2カ月以内に補充を中止できたもの,永続性機能低下はそれ以降も補充を要したものとした。
永続性機能低下症は,乳頭癌両側外側区域郭清施行の1症例のみであり,積極副甲状腺機能温存を意識した術中操作を定型的に行うことが高い機能温存率に寄与すると考える。
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