日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Print ISSN : 2186-9545
特集1
遺伝性褐色細胞腫・パラガングリオーマ症候群
竹越 一博川上 康
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2012 年 29 巻 2 号 p. 104-112

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抄録

褐色細胞腫は内分泌疾患の中で,その進歩において最も著しく,今世紀になって全く概念が変わってしまった疾患といってもよい。その主な理由は,遺伝的なバックグランドが急速に明らかにされた点に尽きる。すなわち,以下の3点に集約される。①新しい原因遺伝子SDHBおよびSDHDの発見,②臨床的に散発性でも潜在的に遺伝性である可能性があること,③悪性化と関係する遺伝子(SDHB)が判明したこと。さらに最近2〜3年間でもSDHASDHAF2TMEM127MAXと4つの原因遺伝子が同定されており,結果的に主なものでも計10種類の多数の原因遺伝子が知られるようになった。これら遺伝的な原因で引き起こされる褐色細胞腫・パラガングリオーマを遺伝性褐色細胞腫・パラガングリオーマ症候群(Hereditary pheochromocytoma/ paraganglioma syndrome(「HPPS」))と呼ぶことがある。褐色細胞腫は10%病とも呼ばれるが,殊に「遺伝性の頻度」に関しては,この有名な法則は既に実情に即してない。今後,遺伝子診断がHPPSの診断のみならず,分子標的薬投与などの治療方針決定にも重要な時代が遠からずやってくるはずである(個別化医療)。本稿では,その臨床的な重要性に鑑みてSDHBD変異による「HPPS」に重点を置いて紹介する。

褐色細胞腫遺伝子解析の現状

1. はじめに

褐色細胞腫の遺伝子診断は,今世紀に入り大きく考え方が変わった分野である[]。その理由は,SDHBおよびSDHDの発見で遺伝性の頻度が上昇したこと,臨床的に散発性でも遺伝性の可能性があること,悪性化と関係する遺伝子(SDHB)が判明したことに集約される。

すなわち褐色細胞腫の原因遺伝子として,1990年代に明らかにされたNF1RETVHLに加えて,21世紀に発見されたSDHB,SDHDSDHC,殊にここ1〜2年で発見されたSDHAF2TMEM127SDHAMAXを加えれば10種類となる。以上より,遺伝病としての褐色細胞腫という概念が確立し,同時に遺伝的に多様なバックグラウンドから発症することから,そのheterogeneousな側面が浮き彫りになった。この中でSDHBSDHDはTCA回路のコハク酸脱水素酵素サブユニットをコードする遺伝子である。本稿では特に悪性化に密接に関連するSDHBについて重点を置いて,最近のこの分野のトピックスも交えながら紹介したい。

2. 背景

コハク酸脱水素酵素(複合体Ⅱ)とは,ミトコンドリア内膜に存在しTCA回路および電子伝達系酵素複合体,両方の構成員として作用しており以下の4つのサブユニット(それぞれコードする遺伝子)から成る。フラボプロテインであるFpサブユニット(SDHA),鉄-硫黄タンパクIpサブユニット(SDHB),これらを内膜につなげるアンカーとして働きヘムを有しているCybL(SDHC),CybS (SDHD)で構成されている(図1)。

図 1 .

コハク酸脱水素酵素サブユニットについて

コハク酸脱水素酵素サブユニット(複合体Ⅱ)の構造・コードする遺伝子・遺伝子座・関連する疾患

SDHBSDHDの変異で発症するHPPSの遺伝形式は常染色体優性遺伝で浸透率は90%以上である[](ただしSDHBの浸透率は最近50%以下ともいわれる[])。これらSDHBSDHD遺伝子はいずれも癌抑制遺伝子として働くと想定される。すなわち,既に一対の遺伝子の片方に胚細胞遺伝子変異(germline mutation)があり,もう一方の同遺伝子の体細胞遺伝子変異(somatic mutation)が生じ複合体Ⅱの機能が消失することで腫瘍形成が起こる(Knudsonの2ヒットセオリー)。

SDHD遺伝子の変異で発症する場合,注意すべき点としてmaternal imprinting現象の存在が挙げられる[]。すなわち,母親から変異遺伝子を受け継いだ場合は,もともとimprintingによって発症しないが,父方から変異を受け継いだ場合は高い浸透率で発症する。一方,SDHB変異で発症する場合はimprintingは報告されていない(表1)。

表1.

SDHxにより発症するHPPSの比較

3. SDHBSDHDの変異で発症するHPPSと臨床症状

SDHBSDHD遺伝子の変異は単に頭頸部パラガングリオーマを引き起こすだけでなく,それぞれ特徴的な臨床像を呈する。最初にGimenez-RoqueploらがSDHBの変異は腹部のパラガングリオーマを初発とし,その後高率に遠隔転移,つまり悪性褐色細胞腫を引き起こすことを報告した[]。同様にNeumannらもSDHB変異は腹部パラガングリオーマと遠隔転移との有意な相関関係を報告した[]。さらにBennらもSDHB変異に同様なphenotypeを見出し先行研究を支持する報告をしている[]。

SDHB変異陽性褐色細胞腫の臨床的な特徴については,臨床上一見散発性褐色細胞腫(ASP:apparently sporadic pheochromocyomas),すなわち家族歴がはっきりしないことが多い。実際,家族歴がはっきり確認できたのは10〜40%にとどまる。これは浸透率が低いことを反映している。また同じ変異を有する家族間でも,初発の腫瘍部位を初めとして臨床症状は異なっている。初診時の年齢が30歳以下もしくは既に転移有,ドーパミンを産生,腫瘍径が6cm以上のどれかを有する症例は進行が早かったことから,これらが予後のマーカーとなり得るとしている[]。

NIHのグループは,悪性褐色細胞腫のSDHB変異陽性例と陰性例の臨床症状の比較をしている[]。SDHB変異陽性例は初発の腫瘍が腹部のパラガングリオーマであることが圧倒的に多い(92%)のに対してSDHB変異陰性例では初発部位は腹部のパラガングリオーマと副腎が半数ずつであった(50%)。他方,他のパラメーターでは,SDHB変異陽性悪性例の方が初発から転移までの期間が短い傾向,血中遊離ノルメタネフリンが高値の傾向があったが,いずれも有意差はなかったという。一方,フランスのグループの報告はこれと異なり,SDHB変異陽性悪性例は陰性悪性例と比較して転移までの期間が短く予後が不良であると述べている[]。

現在まで,悪性褐色細胞腫全体におけるSDHB変異陽性悪性例の割合は約3割〜4割程度と推察される[]。(表2SDHBと悪性褐色細胞腫の関係をまとめた)。

表 2 .

SDHB変異と悪性褐色細胞腫

次に,筆者らが解析を担当しSDHB変異を認めた本邦の例について述べる。合計26例の悪性褐色細胞腫でSDHBの検索を行った結果,腹部のパラガングリオーマが初発であった14例中8例で変異を同定している(57%)。一方,副腎初発例は12例中2例で変異を同定した(16%)(未発表データ)(表3)。この結果は,症例数こそ少ないものの,SDHB変異陽性悪性の褐色細胞腫は高率に腹部パラガングリオーマが初発であるという欧米の報告に合致する[1013]。

表 3 .

筆者らが解析を担当したSDHB変異を認めた本邦症例のまとめ

他方,SDHDの変異は頸動脈小体(carotid body)の腫瘍を主症状とする多発性パラガングリオーマを発症することが改めて示された[]。重要な点は,SDHDの変異による悪性褐色細胞腫の頻度はSDHB変異と異なり0〜7%と低い点である[]。ごく最近のスペイン,イタリア,フランス,イギリスからのHPPSに関する大規模な研究においても,ほぼ上に述べた事柄を支持するデータが出されている[, 14, 16]。

4. 褐色細胞腫の10%ルールは本当か?

褐色細胞腫は10%病とも呼ばれる。すなわち10%は,遺伝性・両側・副腎外・悪性というものである。最近の研究成果により,殊に遺伝性の頻度に関しては,この有名な法則よりもはるかに高頻度であることが明らかになった。Amarらは全褐色細胞腫314人中86人(27.4%)にgermline mutationを同定している[17]。内訳はVHL 8.0%,SDHB 6.7%, RET 5.1%, SDHD 3.5%,SDHC 0%,NF1 4.1%である。 Neumannらの研究では,臨床上一見散発性褐色細胞腫であっても(ASPまたはnonsyndromic pheochromocyomasとも呼ばれる),実に271人中66名(24%)は遺伝性であったという。内訳はVHL 11.1%,SDHB 4.4%,RET 4.8%,SDHD 4.1%にそれぞれgermline mutationを認めた[18]。さらに若年なASP症例ほどgermline mutationを認める頻度が高かった(20歳以下では半分以上,これに対し50歳以上では殆どなし)。現在のコンセンサスとしては,①褐色細胞腫の全体の25%が遺伝性である。②臨床上散発性褐色細胞腫(ASP)では10〜15%が遺伝性とされている[]。

いずれにしても,特に35歳未満で発症した症例やパラガングリオーマや多発例,悪性例では,家族歴がなくても遺伝子変異が潜んでいる可能性を常に念頭に置くべきであろう。また,以上の一連の研究で,SDHBおよびSDHDの変異の頻度は全褐色細胞腫およびASPのそれぞれ約5%を占めることから,決して稀な疾患でないことも明らかとなった。

日本では,東京女子医大の内分泌外科の岡本・児玉らのデータがある。症例224例中45例(内訳:RET33例,VHL8例,NF-11例,SDHB3例)の20% が遺伝性であり,やはり10%をかなり上回っている[19]。

5. 遺伝子診断(SDHBSDHD)の実際

SDHBは8つのエキソンからなる。SDHDは4つのエキソンからなる。現時点では両遺伝子共に明らかなホットスポットは報告されておらず,変異は遺伝子全体に渡り見出される。また,遺伝子の変異の部位と病型との間の関連(phenotype-genotype correlation)も認めない。すなわち,発端者の診断においては,遺伝子の全エクソンを検索する必要がある。

具体的には,血液リンパ球よりDNA を抽出しそれを用いる。PCR法でエキソンを増幅し,それらの塩基配列をダイレクトシークエンス法で決定し変異を検出する。ただし,この方法では大きなDNA領域の欠失は検出できない。SDHx遺伝子は約5〜10%で大欠失も報告されていることから[14],ダイレクトシークエンスで変異を同定できない場合はMLPA(multiplex ligation dependent probe amplification)法を追加するべきである。実際,筆者らも,当初ダイレクトシークエンスでSDHB の変異を同定できなかったが,MLPAで大欠失を同定し得た例を経験している[13]。一方,検出された変異がナンセンス変異もしくはフレームシフト変異の場合は,タンパクの機能低下・消失を意味するので原因遺伝子の可能性が高いが,報告のないミスセンス変異の場合は多型との判別に難渋することがある。

6. その他のHPPS関連遺伝子

最近同定されたHPPS(遺伝性褐色細胞腫・パラガングリオーマ症候群)に発症が関係している遺伝子の種類,機能と腫瘍発生の機序について簡単に述べたい(現在まで同定された主な10種類を表4にまとめて示す。KIF1BβとPHDは極めて稀なので本稿では扱わない)。

表4.

HPPSにおける主な原因遺伝子

TMEM127TMEM127はmTORの活性を負に制御している膜タンパクをコードしている遺伝子である。ごく最近,その変異が褐色細胞腫において報告された[20]。PI3/AKT/ mTOR系の亢進は,様々な腫瘍例えば神経内分泌腫瘍で報告されているが,褐色細胞腫の病態とmTORとの関係を初めて明らかにした点で注目される。実際,TMEM127の変異の陽性の褐色細胞腫では変異陰性のそれに比較してmTORの下流のS6K1や4E-BP1のリン酸化は亢進している(活性化されている)。

発症機序は,TMEM127が癌抑制遺伝子として働くとされLOHも認められる。褐色細胞腫・パラガングリオーマ患者全体の3%に認められるという。遺伝形式は常染色体優性遺伝とされ,浸透率は不明であるが,家族歴を認めない例が多いことから,かなり低いと予想される。臨床的な特徴としては,発症年齢が45歳前後と比較的高齢,両側副腎性が多い,家族歴は認めない例が多い,悪性化は少ない等が挙げられる。

私達は異なる家系の両側性副腎例の2症例にTMEM127(c.116_119delTGTC,p.Ile41ArgfsX39)の同一変異を同定している。この変異は先行研究でブラジルの症例で報告されている[21]。この欠失によりFS(フレームシフト)を生じ最終的には終止コドンも入るので,病的な意味のある変異と考えられる。さらにそれぞれの症例の腫瘍組織にフラグメント解析でLOHを証明し,病的な意味を持つ変異であることを確認した。今回の我々の検討でのTMEM127の頻度は2.7%(2/76)であり,両側副腎性,発症年齢も40代と先行研究に合致している(Takeichi N and Midorikawa S et al, Clinical Endocrinology, In press)。

SDHA SDHA変異はLeigh syndrome で報告されていた。2009年にHPPSに1例目が報告された[22]。最近,腫瘍組織を用いたSDHA免疫染色でスクリーニング可能であり,散発例の3%がSDHA変異を有すると報告された。従って,今後,日本でも検討が必要と考えている[23]。

MAX :ごく最近,次世代シークエンサーを用いたexome sequencingで同定された遺伝子である[24]。発症機序は,癌抑制遺伝子として働くとされLOHも認められる。MAXはMYC-MAX-MXD1というシグナル伝達を介してmTORの活性制御に関係しているとされる。注意すべき点としてSDHD遺伝子の変異と同様maternal imprinting現象の存在が挙げられる。すなわち,母親から変異遺伝子を受け継いだ場合は発症せず,父方から変異を受け継いだ場合のみ発症する。臨床的な特徴としては,両側副腎性が多い,悪性化が多い等が報告された。私たちは,本邦のSDHB陰性悪性例でMAXを検索したが,現時点では陽性例はない。

SDHAF2 SDHAF2は2009年に,PGL2に対応する遺伝子として報告された(SDH5とも呼ばれる)[25]。SDHAサブユニットは,補酵素としてフラビンアデニンジヌクレオチド(flavin adenine dinucleotide,FAD)と複合体を形成することが必要であるが,SDHAF2は複合体形成に必須な因子をコードしている。つまり,SDHAF2の変異によりフラボプロテインであるFpサブユニットの複合体形成に異常を生じ,ひいては複合体Ⅱも機能不全を来たす。臨床的には,変異の頻度は低く頭頸部パラガングリオーマに報告があるのみであるため,このような症状でSDHx変異が陰性に時のみ適応があるとされる。

7. 遺伝子診断の進め方

遺伝子診断を褐色細胞腫の全症例に行うことは,費用対効果を考えた場合推奨できない[]。すなわち,問診と理学的所見により,予め病因と想定される遺伝子を絞り込んだ後に検査することが勧められる(target gene testing)。具体的には,家族歴と褐色細胞腫を伴う症候群に特徴的な徴候(syndromic presentation:例えばMEN2の甲状腺髄様癌やVHL病の網膜血管腫,神経線維腫症1型の皮膚のカフェオレ斑などを指す)が認められる場合は当該の遺伝子診断を行う(ただし例外として,神経線維腫症1型の場合,NF1遺伝子は極めて長大で,かつホットスポットもないため,同遺伝子変異を同定しなくてもカフェオレ斑などで診断できる)。病歴・家族歴・特徴的な徴候の認められない場合は散発性褐色細胞腫と考えられるが,若年(35歳以下)・両側性・多発性・悪性の症例は一度は遺伝性を疑うべきである。その場合,図2の所見が参考になる。

図 2 .

褐色細胞腫の遺伝子検査の進め方

家族歴・特徴的な徴候の認められない場合でも,10%で遺伝性が潜在している。従って,若年(35歳以下)・両側性・多発性・悪性の症例では積極的に遺伝性を疑うことが重要である。特徴的な徴候(syndromic presentation):例えばMEN2の甲状腺髄様癌やVHL病の網膜血管腫,神経線維腫症1型の皮膚のカフェオレ斑などを指す。

殊に悪性診断の場合,SDHBSDHDVHLRETNF1の5種類の遺伝子の変異による褐色細胞腫で,悪性に至る頻度はそれぞれ50%・3%以下・5%・3%・11%であることから,SDHB変異同定の重要性は強調されるべきである[15]。すなわち,悪性褐色細胞腫の問題点としては初回手術時の病理組織診断で良悪性の鑑別はできないことが挙げられる。そのため,SDHBをマーカーとして悪性化を予測し,早期発見と早期治療により,悪性褐色細胞腫の予後改善を図る必要がある。従って,転移を認めない腹部パラガングリオーマのみの患者でSDHB変異陽性なら前悪性状態(pre-malignant condition)としての早期介入が重要であり,また家族に対する発症前診断も今後必要となるであろう(早期介入の重要性の啓発)。

アルゴリズムと補完的に組み合わせることで,SDHx変異同定の効率的なスクリーニングに貢献する方法として,腫瘍組織を用いたSDHBの免疫染色法が報告された[26]。SDHx変異がある場合,SDHBタンパクの免疫染色は陰性となる(染まらない)。一方,SDHx変異がない場合,SDHBタンパクの免疫染色が陽性に染まる。従って,免疫染色でSDHBタンパク陰性の症例のみSDHx変異同定を行えばよいことになる。

8. 今後の展望

今後,臨床的有用性という観点からは,悪性マーカーとしてのSDHB変異同定が最も期待される。すなわち,悪性褐色細胞腫の問題点としては初回手術時の病理組織診断で良悪性の鑑別はできないこと,信頼度の高いマーカーがないこと,転移を認める頃には既に手遅れという場合があることなどが挙げられる。そのため,SDHBをマーカーとして悪性化を予測し,早期発見と早期治療により適切な介入が可能になれば,悪性褐色細胞腫の予後改善につながる可能性がある。発端者におけるSDHB遺伝子検査の利点としては,腹部のパラガングリオーマの段階で悪性化が予測できることにある(表5a)。発症前診断の利点としては,保因者と確定された場合,速やかに適切な治療を開始することができ,より良い予後が得られると期待されることである。しかし,これらの利点と同時に現段階では,発症を予防することができない,臨床的対応法が確立していない,フォローアップ体制が十分でないという問題点もある(表5b)。従って,今後症例の蓄積を行っていく必要がある。すなわち,腹部のパラガングリオーマ例や悪性例には,SDHBの検索が必要ということを啓発しながらも,現在は研究的な段階でもありその有用性と限界を知っておく必要がある。

表 5 .

HPPS(SDHB)における遺伝子診断の意義と問題点(櫻井晃洋博士の許可を得て一部改変し引用した)

治療に関しても,今後,遺伝子診断と分子マーカーの組み合わせで分子標的薬(スニチニブ,エベロリムスなど)の副作用だけでなく,適切な投与量や期待される効果も正確に判定できるようになれば,個別医療への発展が期待される。最近,スニチニブ(sunitinib malate)(スーテント®カプセル,ファイザー社製造)の悪性褐色細胞腫治療に有効性が報告され注目されている[2733]。スニチニブは,複数の受容体型チロシンキナーゼに対する阻害薬であり,特に内皮細胞のVEGF受容体を阻害し血管新生を抑制する[2730]。一方,その機序の詳細は不明である。私達は,図3に示すようにSunitinibはVEGF受容体を阻害を介した血管新生抑制のみならず腫瘍細胞自身にも直接の抗腫瘍効果(アポトーシス誘導+カテコールアミン抑制作用)を発揮する可能性を証明している[33]。

図 3 .

ラット褐色細胞腫由来の培養細胞PC12細胞におけるSunitinibの作用

TH:カテコールアミン合成の律速酵素であるチロシン水酸化酵素

以上より,適切な遺伝子解析は患者と家族にとって有用であり,かつ医科学の進展にも重要であることは言を俟たない。

謝辞

褐色細胞腫診療指針検討委員会諸先生のご指導に深謝いたします。また症例を解析する機会を与えてくださった多くの先生方にもご協力を感謝申し上げます。

【文 献】
 

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https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
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