抄録
外傷などの誘因が明らかでない深頸部血腫の報告は散見されるが,副甲状腺が出血源であった例は稀である。2例の経験を報告する。症例1は血液透析中の82歳女性。頸部痛,前頸部腫脹を自覚し,画像検査にて甲状腺背側から上縦隔に連続する深頸部血腫が認められ,入院の上で保存的に加療したが軽快せず,緊急手術を施行。血腫中に確認された過形成副甲状腺からの出血と判明した。症例2は既往歴のない43歳女性。咽頭違和感,呼吸苦を自覚し,甲状腺背側に血腫が認められ,症状が増悪したため同日緊急手術を施行した。出血源の腫瘤を同定,摘出し病理診断にて副甲状腺腺腫と診断した。両者とも高Ca血症を伴っておらず,術前検査では出血源が断定しづらく,保存的加療には抵抗性で手術により治療,確定診断することができた。文献的考察を加え報告する。