日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
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Print ISSN : 2186-9545
症例報告
透析患者に発見された副腎褐色細胞腫の1例
勝岡 由一月山 秀一天野 江里子小島 茂樹黄 世捷遠藤 陽松村 かおり薄場 渉坂本 三樹菊地 栄次
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キーワード: 透析患者, 褐色細胞腫
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2021 年 38 巻 4 号 p. 281-285

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抄録

50歳代の男性。腎硬化症のため16年前から血液透析がなされていた。胸部異常陰影精査目的の胸腹部CT検査にて5cm大の左副腎腫瘍が指摘された。血液透析患者に発症した左副腎褐色細胞腫と診断され,泌尿器科・循環器内科・腎臓内科・内分泌内科・麻酔科が合同で厳格な水分管理のもとに手術を行う方針となった。術前3週間前よりα/β遮断薬を投与し,dry weightを徐々に増加させた。腹腔鏡下副腎腫瘍摘除術に加えて左腎摘出も行った。腎動脈の遮断まではα遮断薬を用いて降圧し,中心静脈切離後からカテコールアミンで昇圧した。術後合併症を認めず手術9日目で退院となった。血液透析患者の心肺予備能を考慮し,慎重な術前体液管理・術中血圧管理を必要とした点,長期血液透析患者ゆえに組織の脆弱性が予想され手術操作に細心の注意を払った点など,示唆に富んだ貴重な症例を経験したので報告する。

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