日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
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Print ISSN : 2186-9545
特集1
福島での甲状腺検査の進捗状況について
志村 浩己
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2022 年 39 巻 1 号 p. 11-16

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抄録

東日本大震災に引き続いて発生した福島第一原子力発電所事故により,主に福島県内に放射性物質が飛散し,福島県民において小児甲状腺がんが心配されたため,福島県民健康調査の詳細調査として甲状腺検査が震災の約半年後に開始された。

これまで実施された先行検査および本格検査(検査1回目)の結果において,悪性あるいは悪性疑いと診断された対象者の二次検査受診時の年齢は,ほとんどが10歳以上であり,診断例数は年齢と比例して増える傾向があったことや,推定甲状腺吸収線量と悪性あるいは悪性疑い結節の発見率との間に線量依存性が認められなかったことなどから,発見された甲状腺がんと放射線被ばくの間の関連は考えにくいと評価されている。

また,甲状腺癌には生涯にわたって死亡や症状などの問題をきたさない可能性が高い甲状腺癌がみられることが知られているため,甲状腺検査においては,関係学会のガイドラインに従い,二次検査の実施基準と穿刺吸引細胞診の実施基準を設け,検査を実施している。

本稿においては,これまでの甲状腺検査の方法と進捗状況について報告するとともに,これまで得られた結果について概説する。

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