わが国には地下水管理のための一般法は存在していないが,条例により地下水採取を許可制として保全を図っている自治体も増加している。水循環基本法3条2項は,地下水は国民共有の貴重な財産であり,公共性の高いものであると規定しており,この趣旨をふまえて地下水保全の一般法の制定が進められるべきである。地下水の法的性質については,私水説,公水説などの立場があるが,地表の土地の権原に関わらず,健全な水循環を維持するため,地域の公共資源として保全涵養のための規制を行うことが適切である。このためには,国会は地下水保全法案の立法化に向けた取り組みを推進すべきであり,あわせて流域単位で,行政機関と多様な主体が連携した意思決定の仕組みが構築されなければならない。