2020 年 62 巻 3 号 p. 431-448
微生物はあらゆる環境に生息しており,地下水においても102から108cells/mLの存在が報告されている。加えて,次世代シーケンス法の汎用化に伴い,微生物群集の構成や多様性に関する情報量は格段に精度が上昇した。従来,地下水を対象とした微生物研究は,浅層の地下水汚染に関する研究を中心に進められてきた。一方で,近年微生物動態そのものが地下水流動に係わる情報を含んでいる可能性が検討されつつある。しかしながら,地下水流動系とそこにおける微生物の動態に関する理解は十分とはいえないのが現状である。そこで本稿では,地下水流動系という視点から微生物研究の現状と課題を整理し,地下水流動の理解の深化に微生物研究がどのように貢献しうるかを概説する。