抄録
バングラデシュ及びインド・西ベンガルの問題に端を発して.飲料水のヒ素問題が世界規模の関心を集めている.これらの多くは.自然起国によってヒ素を含んだ地下水の利用の結果によるものであるが.最近まで多くの国では飲料水中のヒ素は定期的な監視の対象になっておらず.飲料水中のヒ素による汚染が広く知られるようになったのは比較的最近のことである.バングラデシュ等では.国際的な専門家による汚染メカニズムの究明も進められており.いくつかの重要な要因に関するコンセンサスが次第に形成されつつある.また.これとともに世界の類似の問題について比較し.メカニズム究明に役立てようとする動きが活発になってきている.本報告では世界各地の地下水のヒ素汚染について地質化学的条件の分類に従って紹介している.WHOが中心となって作成中の国連シンセシスレポートは.飲料水のヒ素汚染問題の対応に必要な基礎的情報を集大成するものである.ヒ素汚染問題を有する国々における詳細な調査は汚染メカニズムや汚染分布を明らかにするためのより適切な基礎として重要であり.対策の実施・推進にも役立つものである.信頼できるヒ素の簡易分析技術の開発を含め.今後取り組むべき課題は多い.