老年看護学
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看護師長からみた大腿骨頸部骨折患者のせん妄に関する看護の現状と課題
長谷川 真澄亀井 智子
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2005 年 10 巻 1 号 p. 41-52

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抄録

本研究の目的は,大腿骨頸部骨折患者のせん妄に関する看護の構造と病棟管理上の課題を明らかにすることである.整形外科病棟看護師長11名を対象に面接調査を行った.インタビューの内容は,(1)大腿骨頸部骨折患者のせん妄をどのようにアセスメントしているか,(2)せん妄の予防および発症時のケアの内容,(3)病棟管理者としての対応やスタッフ教育,(4)せん妄ケアにおいて困っていること,とした.分析は,逐語録から質問項目に沿ってカテゴリー化し,アセスメント,予防ケア,発症時のケアに含まれるカテゴリー間の関係性を検討した.その結果,大腿骨頸部骨折患者のせん妄に関するアセスメントは,せん妄発症の身体因子よりも環境の変化や不動に関連した促進因子に注目して行っていた.また,せん妄の予防ケアは患者の日常性を維持する関わりが多く,発症時のケアはせん妄から二次的に起こすおそれがある転倒・転落,点滴類の自己抜去などの事故防止対策が主体であり,せん妄の身体因子を取り除いたり軽減する援助は少なかった.また,管理上の問題として,せん妄患者の入院期間の延長,ケア環境の不整備,せん妄ケアが標準化されていないことがあげられた.今後は,せん妄の発症要因を系統的にアセスメントし,予防ケアに結びつくようなアセスメント・ツールの開発,ケアの標準化,ケアに必要な人員や環境の根拠を明確にしていく必要性が示唆された.

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