老年看護学
Online ISSN : 2432-0811
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最新号
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巻頭言
特集1:日本老年看護学会第28回学術集会
会長講演
教育講演
パネルデイスカッション
特集2:高齢者の睡眠の質を高めるケア
原著
  • 看護師の背景および看護実践能力との関連に焦点をあてて
    工藤 智美, 長岡 真希子
    2024 年 28 巻 2 号 p. 49-59
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,特別養護老人ホームで働く看護師(以下,特養看護師)による病院との連携行動の実際とその評価,および連携行動の評価に関連する要因を明らかにすることである.全国の2,000施設の特養看護師を対象に郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施し,252人を分析対象とした.

     特養看護師による連携行動の評価(以下,「連携行動評価尺度」)と特養における看護実践能力(以下,「NCSI」)との相関分析の結果では,すべてにおいて正の相関(r<0.2~0.5)を認めた.このことから,特養において高い看護実践能力を発揮している看護師は,施設外の病院との連携においても連携行動をよく行えていることが示された.

     連携行動の評価に関連する要因は,「連携行動評価尺度」下位尺度合計得点の上位,下位の2群を従属変数とし,多重ロジスティック回帰分析を行った.分析の結果,連携行動の評価に関連する要因として,特養看護師の背景,および「NCSI」から計7項目が抽出された.このうち「NCSI」〔第2因子:多職種と連携する力〕は,特養看護師による病院との連携行動の評価に最も影響を及ぼすことが示された.一方で,〔第2因子〕の平均得点は「NCSI」4因子中で最も低く,特養看護師の多職種と連携する力を高める必要性が示唆された.

資料
  • 中島 浩子, 草場 知子, 椛 勇三郎, 古村 美津代
    2024 年 28 巻 2 号 p. 60-69
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,急性期病院の看護師が入院時に行う高齢者へのせん妄予防ケアの実態を明らかにし,せん妄予防ケアの実践や教育への示唆を得ることである.急性期病院の看護師459人を対象に無記名自記式質問紙調査を行い,282人(回収率61.4%)から回答が得られ,そのうち259人(回収数の91.8%)を分析対象とした.その結果,看護師の9割は1か月以内にせん妄ケアを経験し,せん妄の因子や予防の必要性を理解していた.一方,認知症やせん妄に関連する研修受講者や,カンファレンスの実施が少ない現状が明らかとなった.入院時のせん妄予防ケアの実践では,住み慣れた環境の再現,回想法,就寝前の足浴やマッサージなどの実施は4割に満たず困難度も高かった.今後は,急性期病院の看護師が,入院時よりせん妄予防ケアを実践していけるように予防ケアの具体的な方法や組織全体でのせん妄予防ケアへの取り組みに向けて支援していく必要性が示唆された.

  • テキストマイニングを用いた実習記録の分析
    生天目 禎子, 黒臼 恵子, 上野 公子
    2024 年 28 巻 2 号 p. 70-78
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル フリー

     本研究は,老年看護学実習において看護学生が印象に残った認知症高齢者との関わりと認知症高齢者からかけられた言葉を明らかにし,老年看護学実習教育のあり方について示唆を得ることを目的とした.老年看護学実習を履修した134人の課題レポートをテキストマイニングで分析した結果,看護学生は認知症高齢者との関わりのなかで【認知症になった高齢者】【認知機能の低下】【行動・心理症状】【快・不快の表し】【残存能力】【言語の受け止め】が印象に残っていた.また,看護学生が印象に残った認知症高齢者からかけられた言葉は,【学生への関係を紡ぐ言葉】【学生の対応への感想の言葉】【学生への労いの言葉】【学生を認識した言葉】【学生を動揺させた言葉】【学生への不満の言葉】であった.認知症の症状に関連した観察は,抽出頻度が高かった.認知症高齢者が表出するその人らしい言動の意味や意思を汲み取ることは,認知症ケアの糸口の発見につながると同時に認知症高齢者の理解にもつながると考えられた.

  • 竹内 千夏, 平井 智重子, 吉本 知恵
    2024 年 28 巻 2 号 p. 79-87
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル フリー

     新型コロナウィルス感染症流行下において臨地実習の代替実習として行った教員を模擬患者とした学内老年看護学実習の実習方法に対する看護学生の捉えを明らかにすることを目的とした.令和3年6~7月に学内実習を経験した看護学生14人にグループインタビューを実施し,質的帰納的方法で分析し,カテゴリー化し,3つのテーマに分類した.結果,学生はすべて女子学生であり,学生の捉えは教員を模擬患者としたロールプレイの実施方法に関して【臨場感のあるロールプレイ】【実践を反復・改善できるロールプレイ】など5カテゴリー,カンファレンス・デブリーフィングの実施方法に関して【多様な実践の共有】【有益なカンファンレンス】など3カテゴリー,学習環境に関して【ゆとりのある実習計画】など4カテゴリーの全12カテゴリーであった.学生は,臨地実習に近い環境のなかで高齢者の特徴を熟知した教員を模擬患者とした学内実習の方法を肯定的に捉えていた.またカンファレンス・デブリーフィングの実施方法および学習環境をおおむね肯定的に捉えており,学内実習だからこその利点が明らかになった.一方で,多職種や家族と関わる機会をつくることや臨地実習指導者と連携することなどの改善すべき課題があることが示唆された.

  • 松尾 綾子, 江本 厚子, 毛利 貴子
    2024 年 28 巻 2 号 p. 88-96
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,介護老人保健施設看護管理者の排尿ケア提供体制への取り組みを明らかにすることである.介護老人保健施設の看護管理者5人を対象に半構造化面接を行い,質的記述的に分析した.その結果,【多職種が連携・協働できる環境づくり】【実践力のある人材の育成】【排尿ケアに対する施設方針の明確化】【業務負担感の軽減】【排尿ケアの課題の把握】【意欲への働きかけ】【ケアの評価方法の決定】の7つのカテゴリーが抽出された.看護管理者は,在宅復帰につながる排尿ケアを提供するために,施設のケア方針を具現化し,チームに対しては,各職種の専門性が発揮できるよう多職種間の連携協働を円滑にし,スタッフ個人に対しては,よりよいケアへの意識が高められるようモチベーションの維持向上に取り組んでいた.

事例報告
  • 蘭 直美, 川島 和代
    2024 年 28 巻 2 号 p. 97-105
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル フリー

     在宅で生活する低栄養の課題を抱える重度の認知症高齢者に対し,老人看護専門看護師,管理栄養士,摂食嚥下障害看護認定看護師がチームになり,口から食べるバランスチャートにより食に関する課題を明らかにし,食支援計画を立案,実施した事例報告である.

     A氏は,食への意欲はあるが本人が希望する食事環境(食物形態等)が整っていない,活動や姿勢・耐久性が極めて低下しており安全安楽で自立した姿勢保持が難しく誤嚥のリスクがある,過体重だが血清アルブミン値が低く栄養摂取のかたよりがある等の課題があった.これらの課題を改善するために,多職種による食支援チームと従来の介護保険制度上のチームが協働しながら,安全安楽に自立して食べるための支援,食べる意欲を支える支援を行った.

     本事例を通して,食の課題を適時・適切にアセスメントすることの大切さ,食べる意欲を大切にした関わり,食支援チームとケアマネジメントの要であるケアマネジャーを中心とした従来の介護保険サービスの職種と意見交換や支援調整を重ねることの重要性について示唆された.

  • 阿部 世史美, 三重野 英子, 小野 光美
    2024 年 28 巻 2 号 p. 106-114
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル フリー

     口腔がん切除再建手術を受けた後期高齢者の自宅退院後の生活を見据えた入院中の看護を明らかにするため,3事例について半構造化面接により退院直後からの生活状況を聴き取り,入院中の事例と看護の経過を記述した.退院後,3事例は,摂食嚥下障害に対して,入院中の食事経験や看護を基に自ら食事を工夫することで困難を克服していた.また,長期入院による体力低下のため退院直後に強い疲労感があったが,周囲の支えを得ながら,生活を継続していた.その背景には,退院後も変わらない人間関係と役割,役割遂行への強い信念があった.入院中の看護として,退院後の摂食嚥下障害と体力低下を予測した看護,入院中の行動の背景にある役割・信念を理解した看護,生活を支える人との変わらない人間関係を理解した看護が重要であることが示唆された.

委員会報告
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