抄録
要介護高齢者の耳垢蓄積の実態とその要因を明らかにすることを目的として,介護老人保健施設の要介護高齢者207名に調査を行った.要介護高齢者の耳垢蓄積の状態は,左右それぞれの外耳道の観察により「閉鎖なし」「1/3閉鎖」「1/2閉鎖」「完全閉鎖」に判定・分類した.耳垢蓄積の要因として,基本属性,耳垢性状,活動性,認知機能および耳のケア状況を設定し,職員への面接調査とカルテ調査を行った.耳垢蓄積の状態は,両側外耳道に耳垢がない者[閉鎖なし群]50.7%,耳垢による両側外耳道が1/2閉鎖もしくは完全閉鎖の者[閉鎖群]9.7%,両側外耳道が完全閉鎖の者4.3%であった.閉鎖なし群と閉鎖群とで耳垢蓄積の要因を比較した結果,閉鎖群が閉鎖なし群より年齢が有意に高く,また,閉鎖群において湿型耳垢の割合が乾型耳垢より有意に高かった.要介護高齢者においては,高度な耳垢蓄積に'高年齢'と'湿型耳垢'の関与が示唆された.