老年看護学
Online ISSN : 2432-0811
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総説
認知症および認知機能低下を有する入院・入所高齢者への身体拘束減少のための介入の有効性;システマティックレビューとメタアナリシス
坂井 志麻河田 萌生亀井 智子富岡 斉実金盛 琢也川上 千春菅原 峰子阿部 慈美黒河内 仙奈鈴木 みずえ綿貫 成明
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2021 年 26 巻 1 号 p. 44-58

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抄録

【目的】認知症および認知機能低下を有する入院・入所高齢者への身体拘束減少に有効な介入プログラムについてシステマティックレビューとメタアナリシスにより評価する.【方法】The Cochrane Handbookの手法により,系統的レビューを行った.文献の適格基準は,①入院・入所中の65歳以上の認知症等高齢者を対象,②身体拘束をアウトカム指標に含む,③ランダム化比較試験とした.メタアナリシスには,Review Manager 5を用い,変量効果モデルによるリスク比(RR)を算出し,異質性はI2統計量により評価した.【結果】14文献が選定され,そのうちスタッフ教育による身体拘束の減少を報告した文献が4件あった.スタッフ教育の内容は,ケアの理念,せん妄予防,拘束帯使用の意思決定,拘束代替案,認知症ケアや入所者との相互作用の強化であり,時間数は30分~16時間と幅があった.メタアナリシスでは6文献,1,355人分を統合したが,身体拘束の実施者数に差は認められず(RR=0.88;95%Confidence Interval=0.72-1.08;I2=70%),盲検化,および症例減少バイアスを認めた.【結論】高齢者ケア施設に勤務するスタッフへの教育は,入院・入所高齢者の身体拘束の減少に定性的評価では有効である可能性が示唆されたが,メタアナリシスでは統計学的有意差がみられず,エビデンスは限定的である.

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