抄録
本研究の目的は,在宅復帰に向けた中間施設という設置目的を持つ老人保健施設の看護職者の,施設内死亡に対する意識を明らかにすることである.平成12年度G県下の施設の看護職者を対象に調査を行った結果,約半数の施設は1年間に1名以上の入所者の死亡を経験しており,ターミナルケアへの組織的取り組みを行っている施設も2割強あることが把握された.一方でターミナルケアに取り組まない理由「ターミナル期の患者が少ない」,「老人保健施設はターミナル期の高齢者を対象としない」といった回答から,中間施設という設置目的とターミナルケアは相容れないとの考えが認められた.ターミナルケアに取り組む上での問題・課題としては「人手不足」,「看護スタッフ間の意識・意思統一ができていない」,「経済的バックアップなし」,「施設外の連携がとりにくい」等があがった.また,医師が常勤とはいえ医療設備等が少ない老人保健施設でターミナルケアを実施するためには,医療機関との連携が重要であることも示唆された.今後,本調査の結果をふまえて,利用者のニーズ,施設方針,看護職者の考えを明らかにする必要がある.