抄録
本稿は沖縄県の石垣島を対象に観光資源としての星空の構築プロセスを検討した。石垣島では近年,自治体の観光基本計画に基づいた星空ツーリズムの推進や「星空保護区」の暫定認定,また星空観望専門の観光事業者を含む関連ツアーの増加とツアー内容の多様化などにみられるように,星空の観光資源化が急速に進行した。この要因には以下の3点が関係していると考えられた。第一に石垣島の観光地的性格を基盤とした星空観望ツアー導入の容易さ,第二に南の島の星まつりの開催による星空の価値化とその共有,第三に自治体における星空を対象とした観光振興の取り組みである。また,石垣市による「星空保護区」の申請のような資源の新たな価値づけの作業は,観光資源の競合状況の中で地域を発展させる取り組みとして有用であった。以上の石垣島の動態は「夜間」のような新規性を有する対象の観光資源化を目指す地域において重要な視点になり得ると考えられる。