抄録
2011 年3 月に発生した東日本大震災では,東北地方を中心に多くの人的・物的被害が生じた。本研究では,復興過程における主体間の社会関係に着目し,それが商業地・住宅地の空間構造に与える影響を明らかにすることを目的とする。研究対象地域である陸前高田市は,津波被害を受け,仮設住宅や仮設店舗が高台や郊外に設置されたことで,商業地・住宅地の一時的な移動が生じた。しかし,長期的な復興を検討する段階になると,商業者や市などの関係者は,既存の紐帯を活用したり新たに構築したりするようになり,これによって地域のレジリエンスを発揮し,新たな商業地の再建に成功した。一方で,住宅地は津波に対する安全性のために高台に移動した。そのため現在では,商業地と住宅地との間に空間的な分離が発生し,震災前とは異なる空間構造が形成されることとなった。