地理空間
Online ISSN : 2433-4715
Print ISSN : 1882-9872
地理学研究と地理教育との間
櫻井 明久
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2015 年 8 巻 2 号 p. 181-195

詳細
抄録

 本稿は,もともと小,中,高等学校における教育経験のなかった筆者が,「地理学研究と地理教育」との間で行った自身の地理教育の試みを反省したものである。筆者は社会科教育講座所属となり,急に小学校社会科の授業方法を教授し,小中高の現職教員の教育研究指導に当ることになった。そのため,地理学研究と学校教育のなかの地理教育との違いにも悩むことになった。こうした経験をもとに,地理教育を考えてみたい。地理学を学んでいる教職志望の多くの学生は,地理教育は地理学を易しく教えることと理解しがちである。しかし,地理学と教科科目・社会科ないしは地歴科地理との間には大きな違いがある。そのことを認識したうえで,地理教育にあたる必要がある。学校現場経験のない筆者が試みることができたのは,一つは,現職教員の研究仲間の研究を評価したことであり,それぞれの仮説に沿ってデータを収集し,それをテコに具体的に児童・生徒の認識を推し測り,その変容から授業を評価し,地理教育などの授業方法・内容の改善の手がかりを得るという試みであった。もう一つは,自身が地理学で学び,フィールドワークで感じてきた地理教育の改善提案を,とくに教材化の試みの中で行ってみたことである。最近の地理教育については,筆者自身の大学における専門科目,教養科目,地歴科教育法の講義科目で試みた自由記述による授業の感想・意見,及び期末試験・レポート評価から,地理教育改善の手がかりを得ようと試みている。また,至らなかった筆者の地理学研究ではあるが,そのフィールドワークから得た地理教育改善のアイデアを考えてみた。

著者関連情報
© 2015 地理空間学会
次の記事
feedback
Top