高等教育研究
Online ISSN : 2434-2343
論稿
薬剤師となることの私的収益率に関する研究
薬学部の量的拡大がもたらした薬剤師就職の費用便益
速水 幹也
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2021 年 24 巻 p. 175-195

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抄録

 本研究では,6年制課程薬学部に進学し薬剤師となることの私的収益率を,①性別・医療専門職別の比較,②女子のライフコース別の比較,③国家試験合格率と標準年限卒業率の反映,という3点を踏まえて算出した.
 その結果,薬剤師の収益率は男子では特に低いこと,女子については他の医療専門職より必ずしも高くないものの,ライフコース別の分析から相対的に有利な専門職であることが明らかとなった.また,国家試験合格率や標準年限卒業率を加味した分析では留年1回ごとに私立大学進学者では約1%ポイント収益率が低下することが明らかとなった.この背景として,入試難易度が影響し,収益率の低下は難易度が低い大学において顕著であり,薬学教育改革による修業年限の延長と量的拡大が要因として挙げられることを指摘した.

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© 2021 日本高等教育学会
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