抄録
日本の気象官署109 地点の1962 ~ 2009 年の観測資料を整理・解析することで,累積降雪深が減少している地点の地域性について明らかにし,その地域性を与える要因についての考察を行った。
累積降雪深は,寿都で有意に増加しているが,東北地方の日本海側,北陸地方および西日本では有意に減少している。これらの地域は主に気温上昇による降水形態の変化が起こりやすい地域(降水遷移地域),または冬季平均気温が降水形態の雪/ 雨の判別気温よりも高い地域(温暖地域)である。
降水遷移地域では,累積降雪深の減少の有無は降雪をもたらす気象条件によって日本海側と太平洋側に分けられる。日本海側では,降雪はおもに冬季季節風によってもたらされるため,冬季の気温上昇によって降水形態の雪か雨かが変化することにより累積降雪深が有意に減少していると考えられる。
温暖地域では,累積降雪深が有意に減少するか否かを分ける気象条件は,降雪をもたらす低気圧の通過パターンである。累積降雪深が有意に減少している地点では,二つ玉低気圧によって降雪がもたらされることが多く,二つ玉低気圧型気圧配置の発生数が減少傾向にあるため,この地域においては累積降雪深が減少していると考えられる。