本稿では,〈水分が多い〉さまをプラスに評価したことを言語化する形容詞ミズミズシイについて,意味が拡大していく様相を通時的・体系的に考察した。名詞ミズを重ね,量を強調した副詞ミズミズの形容詞形として明治期前半頃までに誕生したミズミズシイは,動植物について〈水分が多い〉〈新しい〉〈生命力・魅力がある〉といった意味を形容する語であった。しかし,大正期には人間の思考・感情の形容にも用いられるようになり,昭和期には,こうした派生的な用法が芸術分野において感動を表す鑑賞用語として定着した。ミズミズシイに認められる,水分の多寡に対する評価語から人間の心が大きく揺り動かされたときに発する心情表現語へ,という意味変化は,対義語ミズクサイにも同様に認められる。この現象の背景には,水に対する肯否の価値観(プラス評価「水は常に流動的で生命を生み出す源である」/マイナス評価「水は無味無臭で味気ない」)が存したことを指摘できる。
スラブ起源水は,高温,高塩濃度,高CO2濃度などの特徴を持ち,その特徴の違いから長期滞留性の化石海水と区別される深部流体の一種である。本研究では,スラブ起源水が含まれる有馬温泉,鹿塩温泉,紀伊半島の温泉水および周辺河川水について,DNA解析に基づいた微生物群集構成の比較解析を行い,スラブ起源水の混入を特徴づける微生物の推定を行った。その結果,冷鉱泉である鹿塩温泉や紀伊半島の温泉水から嫌気性好熱菌が複数検出された。それらは深部の嫌気的な高温環境に由来すると考えられることから,スラブ起源水の関与を示唆する微生物種である可能性がある。今後スラブ起源水を含む地下水のDNA解析事例を増やし,知見を蓄積していくことで,DNA解析をスラブ起源水混入の総合判断に活用できる可能性について検証することが必要である。
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