日本水文科学会誌
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研究ノート
熊本市江津湖周辺における地下水湧出量の再考察
一柳 錦平 井手 淨嶋田 純市川 勉
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2020 年 50 巻 1 号 p. 3-11

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抄録

熊本市は水道水源の100%を地下水で賄っており,市内の水前寺・江津湖周辺には多くの湧水が存在している。江津湖周辺の地下水湧出量を推定するために,1991年12月より加勢川の13地点で流量観測が行われてきた。これまでの研究では,地下水湧出量は最下流の流量から最上流と流入河川を足した流量の差として求めていたが,地下水湧水量の長期変動は地域ごとに異なることが指摘されている。そこで本研究では,水前寺,上江津湖,下江津湖のゾーンに分けて地下水湧水量を求め,それらの合計値を全地下水湧水量と定義した。その結果,各河川流量の長期変動には違いが認められ,各ゾーンの地下水湧出量の長期変動は異なることが明らかとなった。とくに,下江津湖ゾーンでは2003年以降,地下水湧水量が負の値となる期間がたびたび見られる。そこで,各ゾーンの地下水湧水量が負になる場合,負のまま計算した場合(Case1)と,地下水湧水量は無いとして正の値だけ計算した場合(Case2)について比較した。その結果,全地下水湧水量は1992年に約450,000 m3/dayと多かったが,2006年6月まで徐々に減少し,Case 1では約317,000 m3/day, Case 2では約344,000 m3/dayとなった。その後,2006年6,7月の豪雨後には,両ケースともに約430,000 m3/dayまで急激に回復した。長期傾向は変わらないが,Case2の最小値はCase 1よりも約27,000 m3/day大きくなり,減少傾向は緩やかになった。

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