2025 年 17 巻 1 号 p. 1-13
本稿の目的は、集積の経済性の視点から、海外子会社の立地選択の要因を明らかにすることである。地域特化および都市化の経済性が海外子会社の立地を促進する効果は、製造業とサービス業のそれぞれにおける産業の異質性によって変化するという議論を行う。日本における外資系企業の立地選択を対象として分析を行った結果、以下の傾向が見いだされた。(1)企業は海外子会社の立地選択において、地域特化の経済性や都市化の経済性を期待できる地域を選択する傾向を持つ。(2)製造業では研究開発集約的な産業ほど、企業は海外子会社の立地選択において地域特化の経済性が高い地域を避けるようになる。(3)サービス業では知識集約的な産業ほど、企業は海外子会社の立地選択において地域特化の経済性が高い地域を積極的に選択するようになる。これらのことは、地域における都市化の経済性は多国籍企業にとって魅力的な立地要因となるものの、地域特化の経済性が海外子会社の立地を促す効果は、製造業における各産業の研究開発集約度と、サービス業における各産業の知識集約度によって変化することを示している。