日本イオン交換学会誌
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功績賞受賞記念論文
水との出会い
—生薬の抽出成分と水—
神崎 愷
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2012 年 23 巻 2 号 p. 43-50

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抄録

科学が高度に進歩している現在にあっても,水についてはいまだに不思議な水がまかり通っているのが現状である。しかしながらそのようにまか不思議な水が存在しないことはじっくり考えてみれば明らかなことであろう。本研究では生薬(漢方薬)を煎じて薬物有効成分やエキスを抽出するとき,抽出に使った水によってどのように抽出成分が変わってくるかを,多変量解析法を用いて調べた。水については硬度を第一要因と仮定して,できるだけ多くの種類の溶存物質,特にイオン種の濃度などの実測値をベースに多変量解析を行った。生薬としては芍薬,薬物有効成分としてはペオニフロリンを取り上げ,天然水としては市販のペットボトル入りのものを用いた。その結果抽出に関わる因子として,カルシウムイオン(Ca2+)と炭酸水素イオン(HCO3)が負の要因として抽出され,pH も若干の影響があることが分かった。多変量解析により導き出された抽出式(ペオニフロリンの抽出量:Y)は
Y=28.11−0.71 pH−0.0034[Ca2+]−0.93[HCO3]
に従うことが明らかにされた。

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© 2012 日本イオン交換学会
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