多価多成分イオン-イオン交換膜系におけるイオン透過現象をNemst-Planck式とDonnan平衡に基づく理論式で記述した。種々の電解質系における膜電位と透過係数の膜荷電密度依存性をこの理論式で計算し, またポリビニルアルコールをべースにした膜を用いてこれらの値を測定した。この結果より多価多成分イオン系におけるイオン選択透過性と膜荷電密度との関係について検討した。この系では系内に含まれる最大価数の対イオンが膜内に優先的に取り込まれるためこのイオンが透過現象に重要な役割をする。この最大価数を持つ対イオンの優先的な取り込みにより特定の膜荷電密度領域でこのイオンの膜中濃度勾配は外溶液の濃度勾配と逆向きになりUPHILL輸送が起きる。この現象を用いればイオン交換膜の膜荷電密度を光照射, 温度変化等の外部刺激で変化させ, 多価イオンの透過方向や透過量を制御することが可能である。