抄録
目的
ラオス人民民主共和国(以下ラオス)南部の地方住民の健康概念を明らかにし、属性や主観的健康感及びHealth Locus of Control(以下HLC)が健康行動にどのような影響を与えているのかについて研究を行った。本稿では、その結果を報告しラオスの保健介入を行う一助とすべく考察した。
方法
2009年6月にラオスのサワンナケート県L地区において、20歳以上の男女、合計141名(男性70名、女性71名)を対象に質問紙を用いて調査を行った。解析は健康概念については記述統計とし、主観的健康感は年齢階級でのロジスティック回帰分析、性別と学歴でのχ2検定を行った。HLCについては因子分析を行い、更に、健康行動毎に、属性、主観的健康感、HLCでの重回帰分析を行った。
結果
有効回答者は138名であり、有効回答率は97.8%であった。
健康概念については、「サバーイ(快適な)」、「サバーイ・ディ(快適で良い)」という回答が多かった。
主観的健康感は年齢階級に統計学上有意差があったが性別では有意差はみられなかった。
健康行動に影響を与える要因は、「年齢が高い」、「近代化」、「医学の進歩」、「自己努力」、「健康と感じない」が抽出された。
あまり健康と感じていない人は、村内で施行可能な近代医療と考えられる「ビタミン注射」や伝統医療を行う「モー・ラーオ」の所に行く傾向にあった。
結論
ラオス南部のL地区住民の健康概念は、身体的だけでなく精神的及び社会的に良好な状態を健康と考えているとみなせた。
伝統医療と近代医療を取り入れていたのは、年齢が高い世代であった。今後、近代医療と伝統医療の使い分けについて、住民の健康行動の選択基準を明らかにし、保健医療資源の活用に関して正しい知識と食の栄養教育を行う必要性が示唆される。