抄録
目的
保健室が設置されておらず養護教諭が常駐していない朝鮮初級学校に子どもを通わせる保護者の、家庭での性に関する教育の実施状況と学校での性教育へのニーズを明らかにし、朝鮮学校に通う生徒の特徴を踏まえた系統だった初級学校での性教育に向けての基礎的な資料を得ることを目的とする。
方法
大阪、京都の朝鮮初級学校の4、5、6年に子どもが在籍している保護者を対象に、無記名自記式質問紙調査を行った。調査期間は2012年6月~11月、調査内容は属性、家庭での性に関する教育の必要性と実施状況、学校での性教育の必要性、などの計20項目である。
結果
質問紙は8校の初級学校で289部配布し、回収数49部(回収率17.0%)、有効回答45部(有効回答率15.6%)であった。家庭での性に関する教育を「必要」だと回答した者は42名(93.4%)で、実施すべき時期は「中学」が27名(64.3%)と最多で、次いで「小学6年」19名(45.2%)であった。家庭で必要な性に関する教育の内容は「生命の大切さ」28名(62.2%)、「男女の体の違い」26名(57.7%)が多かった。家庭での性に関する教育実施状況は「実施している」17名(37.7%)、「実施していない」27名(60.1%)であり、実施している者17名の実施時期では「小学4年」が8名(47.0%)、内容では「男女の体の違い」12名(70.6%)が最も多かった。学校での性教育の必要性は45名全員が「必要」と回答しており、適していると考える学校での性教育実施時期は、「小学6年」25名(55.5%)が最も多く、希望する内容は「男女のからだの違い」41名(91.1%)や「生命の大切さ」33名(73.3%)が多かった。希望する性教育実施者は外部講師(看護師、保健師、助産師)が42名(93.3%)で最多であった。
結論
家庭での性に関する教育は「必要」だと考える保護者が多いにも関わらず、実施できているものは少ないという本調査の結果から、子ども達が性についての正しい知識を持ち、自分を守るためには、学校での性教育が重要な位置を占めると言える。朝鮮初級学校では、看護師・助産師などの外部の医療専門職者による教育が求められていること、教員や保護者からの在日医療人への期待が大きいことなどから、このテーマにおける在日韓国・朝鮮人医療専門職者の役割は大きいと考えられた。