目的
首都圏外の地方で最も多くの外国人人口を抱える愛知県において、市町村の公式ウェブサイトによる外国人住民向け医療情報の提供状況を明らかにし、医療情報提供状況と市町村の規模および外国人住民数・割合との関連を調べることを目的とした。
方法
愛知県内全54市町村の公式ウェブサイトをデータソースとし、市町村単位(以下市町村を問わず「自治体」)で分析した。2018年5月〜8月に自治体公式サイトを閲覧し、言語対応状況と救急、小児健診、成人健診に関する情報の24項目について、チェックリストを用いて2名の評価者が独立して評価した。その評価結果を第3者が照合、結果が一致するまで3名で確認した。各評価項目を単純集計し、あいち救急医療ガイドのサイトへのリンクの有無、小児健診に関する外国語情報の有無、成人健診実施機関リストの外国語対応の有無の3項目については、自治体の規模および外国人住民数・割合との関連をフィッシャーの正確確率検定で分析した。
結果
ウェブサイト自体が外国語に対応していたのは54自治体中49(90.7%)、ページ全体の自動翻訳機能を利用している自治体は43(79.6%)だった。英語、中国語、ポルトガル語、韓国語は半数以上で対応があった。救急は45(83.3%)、小児健診は44(81.5%)、成人健診は42(77.8%)の自治体で少なくとも1外国語での情報があり、情報までの平均クリック数はそれぞれ1.6回、2.7回、3.6回だった。しかし、小児健診実施場所の情報は8(14.8%)、成人健診実施医療機関のリストの外国語対応は23(42.6%)サイトでしか確認できなかった。あいち救急ガイドへのリンクと自治体規模、外国人数の間には有意な関連を認めた。外国人割合最多群13自治体のうち10(76.9%)で成人健診実施リストの外国語対応が確認できなかった。
結論
多くの自治体で医療情報は少なくとも1外国語での対応があったが、ニーズが急増していると考えられる言語への対応が遅れていると考えられた。また、自動翻訳に頼る部分は大きく、自動翻訳では対応ができていない情報も多かった。救急に関する情報に比べると、今後ニーズが高まると予想される小児健診、成人健診へのアクセスは悪く、情報量は少なかった。また、汎用性のある外部サイトが、特に小規模自治体で、十分活用されていなかった。医療情報を提供する自治体側の現状把握と医療情報を受け取る外国人住民からも情報収集し、より現状に合わせた医療情報提供の在り方を探っていく必要がある。