国際保健医療
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大阪府下周産期母子医療センターにおける在留外国人妊産褥婦看護実践の現状と課題
髙 知恵千葉 貴子中根 祥子藤川 陽子吉田 有希土井 智恵子菊川 佳世宇田川 直子宮下 ルリ子前田 隆代
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2024 年 39 巻 2 号 p. 21-32

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抄録

目的

  日本の在留外国人数は増加傾向にあり、2023年には過去最高を更新し、20代、30代のリプロダクティブ世代も多い。そこで、本研究では外国人が多く来院する大阪府下周産期母子医療センターの産科外来・病棟で実践する外国人妊産褥婦看護の現状と課題について明らかにする。

方法

  大阪府下周産期母子医療センター23施設のうち、研究協力への同意が得られた施設の産科代表者各1名を対象に2023年10月1日~12月31日の期間で自記式質問票調査を実施した。

結果

  8施設(34.8%)から調査票の返信を得た。外国人妊産褥婦看護の現状として、医療通訳は、妊娠期は「妊娠中の異常・注意事項説明時87.5%」で、分娩期は「緊急帝王切開の説明時62.5%」で、産褥・新生児期は「産後・退院後の異常、注意事項の説明時75.0%」、「退院後の新生児に関する異常、注意事項の説明時75.0%」で多く活用されていた。家族・友人などの通訳は、妊娠期は「妊婦健診75.0%」、「妊娠中の異常、注意事項説明75.0%」、「入院準備物品の説明時75.0%」、「入院時期・入院方法の説明時75.0%」で、分娩期は「分娩入院時87.5%」で、産褥・新生児期は「産後・退院後の異常、注意事項の説明75.0%」、「退院後の新生児に関する異常、注意事項の説明75.0%」で多く活用されていた。既存の多言語資料は「説明用イラストカード」、「コミュニケーションカード」、「子育て支援情報」が半数以上の施設で活用されていた。多言語翻訳機器は全施設で活用されており、日本国際看護師(NiNA)や母性看護専門看護師(CNS)などの「調整」役を担う人材の活用をしている施設もあった。文化・宗教的配慮では、入院中の食事への配慮と宗教上の配慮は回答した全施設で実施されていた。

結論

  大阪府下周産期母子医療センターにおける外国人妊産褥婦看護では、言語的課題への対応として医療通訳、家族や友人の通訳、電話通訳、多言語翻訳機器に加え、様々な多言語資料を活用しており、文化的宗教的配慮も全施設で実施されていた。一方で、24時間365日で活用できる医療通訳者がいないことから、特に分娩期のあらゆる場面では家族や友人などの通訳者が活用されている傾向や、無料で活用できる既存の多言語資料があるにもかかわらず十分な活用に至っていないという現状もあり、今後の課題も明らかとなった。

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