社会言語科学
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第二言語としての日本語小論文におけるgood writing評価 : そのプロセスと決定要因
田中 真理坪根 由香里
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2011 年 14 巻 1 号 p. 210-222

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抄録

本稿の目的は,第二言語としての日本語小論文におけるgood writingが日本語教師にどのようにとらえられているのかを,その評価プロセスや決定要因を分析することによって明らかにし,good writingを目指すための教育について検討することである.good writingの候補である2種類各6編の小論文を,日本語教師10名に総合的評価で順位付けをしてもらい,評価の際のプロトコルをとった.そのプロトコル分析と事後のアンケート調査の分析より,「課題の達成」「主張の明確さ」「内容のオリジナリティ」「客観的で広い視野からのサポート」「構成」「談話展開のテクニック」「表現力の豊かさ」等が順位決定要素となっていることがわかった.しかし,どの要素を優先させて評価するかについては日本語教師の間に共通の認識が認められなかった.各要素のバランスがよい小論文では評価が一致したが,バランスの悪い場合には評価が分かれるものもあり,「主張」「課題の達成」「全体構成」等の第一義的な要素が不十分でも,卓越した「サポート」やアカデミック・ライティングにふさわしい,高い「表現力」が認められると,総合的評価では高く評価される可能性のあることが示唆された.ライティング教育とライティング評価は直結する.good writingがどのようなものであるかを学習者に示すためには,その評価方法等に関する検討,共通理解が今後必要であろう.

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© 2011 社会言語科学会
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