社会言語科学
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多層的相互行為としての「ボーナス・クエスチョン」 : 教室におけるメタ語用的言語使用という視点から
榎本 剛士
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2012 年 14 巻 2 号 p. 17-30

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抄録

本稿は,高校生のメタ語用的言語使用という切り口から教室談話を分析することを通じて,「社会的相互行為」の時・空間としての教室の多層性を描出することを目的とする.まず,様々なアプローチからの教室談話研究から得られる諸々の有益な知見を示し,それらを踏まえて,本稿の位置づけ,および本稿が依拠する理論的枠組みと分析概念を示す.その上で,埼玉県のある公立高校の「英会話」の授業を事例とし,必ずしも全体で共有されることのない生徒同士のやりとりの中でも「教室で起こっていること・アイデンティティ・権力関係」に関する解釈に直接言及する談話を分析に取り入れることで,(1)同じ言及指示的テクストを共有しつつも異なる次元で生起する,二つのI-R-E構造を同定する.そしてそれらが,(2)互いに還元され得ない複数の「フレーム」が立ち上がっていることの証左であることを指摘することにより,(3)教室という場において,異なる行為の意味がいかに複数同時に生まれているかを経験的に示す.

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© 2012 社会言語科学会
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