抄録
本稿は主として社会学の立場から,言語管理(language management)における「言語問題」を位置づけ直し,それを政治的問題として再構成することを目的とする.そのためには,まず最初に「言語問題」がどのような現象を指す用語であるのか問い直すことが必要である.ここでは,ネウストプニーの先駆的業績をもとにして「言語問題」の輪郭を描き,その中の「管理プロセス」と「規範」の概念を社会学的に検討する.その結果,相互行為における「言語問題」の調整ステップを示した「管理プロセス」はひとつの政治的プロセスとして再構成される.すると,そこでの言語問題の解決は文字通りの解決を意味しない.相互行為において調整され,一見解決されたかに見える「言語問題」は,実際には現在の社会に浸透し自明視された不均衡な権力関係や差別を再生産する働きをする.つまり,「言語問題」の調整と解決は,きわめて権力とかかわる現象である.