2000 年 3 巻 1 号 p. 17-23
本稿では,19世紀末から20世紀初頭にかけてカナダに移住した日本人が,ホスト社会の言語(英語)から母語(日本語)に単語を借用した時に,どのような現象が起こったかを分析していく.まず第1節で研究の目的を述べ、第2節で,日系カナダ人の歴史を概観する.次に第3節で,日本語と英語の音節構造を比較したうえで,現代日本語で英語から単語を借用する際に観察される音韻的諸特徴のうち,母音挿入について検討する.第4節では,日系カナダ人一世が書き残した資料にあらわれた借用語を母音挿入の観点から分析した結果を示し,最後に第5節で,今後の研究の方向を展望する.