2006 年 9 巻 1 号 p. 4-15
本稿では研究者が行なう社会的認知とコミュニケーションの問題に焦点をあてる.社会的認知研究者が抱く人間に対するステレオタイプと参加者に対するステレオタイプはここ半世紀で変化してきた.しかし,それらは「孤立した,不完全なコンピュータ」「研究者に反応する動物」という点で共通している.このステレオタイプは,研究に方法論上の問題を持ち込んできた.社会的認知研究者が,研究状況での研究者と参加者のコミュニケーションの問題を視野におさめることによって,このステレオタイプが転換していき,研究の方法論の精緻化が行なわれていく方向性を示唆する.