社会言語科学
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日本語におけるターン構成単位の認知メカニズム
榎本 美香
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2007 年 9 巻 2 号 p. 17-29

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抄録

本研究では,日本語の会話において話者交替に適切な場所で聞き手が自発話を開始するための認知処理のメカニズムを明らかにする.このタイミングで話者交替を行うために,聞き手が(1)格要素などによる投射を刊用してターンの完結点となる可能性のある箇所を予測し,(2)この筒所に後続する「です」や「ます」などの発結末要素をトリガーとして次発話開始に至る,という処理を行っているという仮説を検証する.これを検証するため,ターン完結点となる可能性のある箇所への予測の有無・次発話開始のトリガーとなる発話末要素の有無という2要因からなる実験デザインを用いて,話者交替までの反応時間を測定する.発話末要素のある条件では予測の有無にかかわらず実際の会話同様極めてはやいタイミングで反応がなされるのに対し、発話末要素のない条件では,完結可能点への予測があったとしても円滑とはいえないほど反応が遅れるという結果から,ターンの完結点を認識するにあたって聞き手は認知処理(1)ではなく(2)を行えば十分であることを示す.

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© 2007 社会言語科学会
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