2024 年 31 巻 3 号 p. 231-238
2020 年に勃発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的伝播とその収束の3年間を経て, IT 関連産業を中心に少しずつ広がっていたテレワークが,ほぼ全業種に及び拡大された。その頻度や形態に地域や職域間の差はあるが,社会一般のなかでテレワークを取り入れた働き方が一般的になりつつある。テレワークに伴うストレス対策には,様々な課題や個人の趣向の差が指摘されるが,WHO ならびに ILO が 2022 年2月公表した,テレワークの労働安全衛生に関する技術的ガイダンスが重要な提言となる。テレワークが及ぼす心理社会的ウェルビーイングへの影響に,種々の修飾・緩衝因子が介在していることを考慮しつつ,産業保健スタッフがテレワークを用いて働く人に対するメンタルヘルス支援を行っていく重要性が示唆される。テレワークの進展と相まって,近年では,スマートフォン等様々なインターネットやアプリケーションを用いたメンタルヘルス不調の予防や治療に関する実装展開が進んでいる。これら携帯電話や個人モニタリングデバイス,ワイヤレス装置といった mobile devices を用いた医療・公衆衛生実践活動(mHealth)の効果や妥当性検証の議論がつづいているが,テレワークで働く人が日常的にこれらを活用しながら働いていることを認識しておくことが重要となる。
テレワークの普及に伴い,遠隔でのオンライン機器を用いた産業保健活動が広がっている。オンラインでの認知行動療法は,対面での場合とその効果は劣らないという報告があるが,実際の運用については,対面で想像できなかった課題が存在する。日本国内の EAP 機関でのカウンセラー側からは,オンラインによるカウンセリングは,相談者の利便性向上に資する一方で,カウンセリング環境やその準備,姿勢に不充分な点があったり,カウンセラー側が相談者の心理状況を判断するにあたっての情報量が不足する可能性が指摘されている。今後,オンラインでのカウンセリングの適用条件等や課題解決にむけた方策を検討することが期待される。