2024 年 31 巻 4 号 p. 263-268
本論文は、現代における「人的資本経営」へのシフトと、ウェルビーイング(Well-Being)を軸としたライフ・キャリアの統合的な従業員支援の重要性を論じる。従来の産業保健は労働安全衛生法などの枠内で不調者の治療、早期発見、予防に重点を置いてきたが、今後は従業員の多様な価値観やキャリアを尊重し、成長発達を支援する多様な支援モデルが求められる。Well-Being には信頼に基づく良好な人間関係が不可欠である。さらに、事例としてあげたのは、中高年正社員で出向転籍、役職定年や組織変革によるさまざまなダウンサイジングの過程で心理的不調を抱える者の事例である。一方的なリスキリングを強いることなく、支援者側が共感的な対話を重視し、関係者間の連携を図ることが求められる。50 代の調査研究では、キャリア面接が従業員の自律性や Well-Being 向上に効果的であることが確認された。