抄録
「ケリファイト」とはざくろ石の分解によって生じる細粒の放射状構造をした鉱物集合体で、シンプレクタイトの一種であるといえる。一方「シンプレクタイト」は、通常、ケリファイトより粗粒で、ざくろ石以外にも、輝石や角閃石などが、不安定化して分解することにより発生する。いずれについても、鉱物学的にも組織的にも多様なものが知られており、その詳細な研究は岩石がたどった変成履歴を知る上で重要な役割を果たしてきた。本発表では特にそれらの微細構造に注目し、その多様性の中に、共通する普遍的な性質を見いだす試みを紹介する。様々な産状からの例を写真で紹介し、特にケリファイト線構造に関する「垂直の法則」なるものを提示したい。そしてその法則の成り立つゆえんを、熱力学的開放系における、物質移動と結晶成長の観点から考察する。