抄録
リンポポ帯産の十字石を含む泥質片麻岩は主にざくろ石、斜方輝石、石英からなり、ざくろ石はサフィリン、石英、十字石、藍晶石、珪線石、斜方輝石、ルチルなどの包有物を含む。ざくろ石に直接包有される十字石はMgに富み、Mg/(Fe+Mg)=0.58に達する。十字石とざくろ石との境界線は不規則であり、その接触部にはサフィリン+石英シンプレクタイトが形成されている。このサフィリンおよび石英は細粒の十字石を含むことから、以下のような累進変成作用におけるサフィリン+石英の形成が考えられる。
St + Grt → Spr + Qtz + H2O
この岩石は低いK含有量と高いMg/(Fe+Mg)比で特徴づけられる特殊な全岩化学組成をもち、石英に乏しい条件下でのざくろ石との反応により、十字石の周囲にサフィリン+石英が形成されたと考えられる。