抄録
秋田県男鹿半島の目潟火山に属する一の目潟の噴出物中に超マフィック・マフィック捕獲岩を含んでいることはよく知られ,様々な研究がなされてきた。これらの岩石には角閃石が多く含まれており,それらの少なくとも一部は二次的な生成物であるとされている (Arai and Saeki, 1980; Takahashi, 1986)。超マフィック捕獲岩については様々な研究がなされる一方,マフィック捕獲岩についての研究は比較的少なく (例えばAoki, 1971),特に加水作用について詳細に検討したものはない。本研究では斑れい岩について主要元素,微量元素について検討を行い,どのようなメルトまたは流体が角閃石形成にかかわったのか明らかにしたい。
本研究に用いた斑れい岩は粒状組織を示し,斜長石,角閃石,単斜輝石,斜方輝石,スピネル,磁鉄鉱,かんらん石から構成されており,幅広いモード組成を示す。斑れい岩中では角閃石が単斜輝石を置換し形成している様子が見られ,初生的な角閃石のほかに,二次的な角閃石も存在する。単斜輝石の化学組成と比較すると,二次的な角閃石はTiO2やNa2O,K2O,Rbなどのインコンパティブル元素に富んでいる。これらの元素は加水作用によって単斜輝石に付加され,角閃石を形成したと考えられる。
これらの結果を上部マントルから得られた結果と比較することによって,島弧深部の深さ方向の加水作用の変化を考察することも可能であると考えられる