マスケリナイトの存在は,隕石の衝撃程度を示すショックステージの指標の1つであり,その生成圧力は衝撃回収実験から見積もられている.しかし,衝撃回収実験における圧力保持時間は,母天体における衝撃の圧力保持時間と大きく異なる.本研究では,非晶質化圧力の時間依存性を検討するため,ダイヤモンドアンビルセルを用いて,Ab99,Ab89, Ab4の粉末試料で静的高圧実験を行った.回収試料のラマン分光,TEMによる構造解析により,Ab99,Ab89,Ab4の非晶質化圧力は37,34,25GPa以下と見積もられ,斜長石のアルバイト成分が増加する程,非晶質化圧力は高くなることが明らかになった.これは衝撃回収実験における非晶質化圧力と同様の傾向である.室温での静的高圧実験における非晶質化圧力は,衝撃回収実験における非晶質化圧力に比べてわずかに低い(>3GPa)が,有意な差は見受けられない.