日本鉱物科学会年会講演要旨集
日本鉱物科学会2008年年会
セッションID: R4-P06
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R4:鉱物の記載・分析
栃木県鷹ノ巣鉱山産トゥチェク鉱(tucekite)
*大浜 多喜山田 隆小菅 康寛松原 聰
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抄録

栃木県鹿沼市(旧上都賀郡粟野町)発光路鷹ノ巣鉱山からトゥチェク鉱(tucekite;Ni9Sb2S8)を見出した。 トゥチェク鉱はオーストラリアと南アフリカから発見され1980年に記載された鉱物で、ハウチェコルン鉱グループの一員、正方晶系の鉱物である。近年、埼玉県広河原鉱山からも微細なものが見つかっている(西久保ら2005)が詳細な鉱物学的性質については公表されていない。足尾山地の層状変成マンガン鉱床である鷹ノ巣鉱山における野外調査の結果、一定量のトゥチェク鉱を採集し実験に用いることが出来たので、産状や形態とともに、実験結果を報告する。鷹ノ巣鉱山は足尾山地の変成層状マンガン鉱床の一つで、久良沢鉱山とともにマンガンパイロスマライトの産出で知られる。 トゥチェク鉱は方解石あるいは菱マンガン鉱に包有され、マンガンパイロスマライトやバラ輝石の結晶の隙間に、錐面を伴う正方柱状の自形結晶として産する。結晶の長さは最長で約4mm、太さは最大でも1mmまでである。新鮮なものは白色の金属光沢で光をよく反射するため、微細な結晶でも肉眼で気付きやすい。空気中に放置すると次第に輝きを失う。電子線プローブマイクロアナライザーによる化学分析では、およそNi:Sb:S=9:2:8で、わずかにCoやBiを含む。X線粉末回折実験により格子常数はa=7.216, c=5.383(Å)であった。

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