抄録
河川では、夏期は冬期と比べ粘土鉱物分が多く、鉄分に富み、CaOに乏しい。その理由は、(1)水の張られた水田から粘土鉱物(Si,Al)が流出しやすい。(2)CaOは溶解度が低く、河川流入前に沈殿する。(3)FeOは溶解度が大きいうえ、地表面での酸化によって懸濁物質が生じやすい 。 (4)冬期は水田に水が張られておらず、粘土鉱物が流出しにくい。(5)冬期は土壌中のCaOを溶かし込んだ地下水が流出。
霞ヶ浦西浦の懸濁物質の化学的特徴と比較すると,河川の懸濁物質はSiO2やAl2O3が少なく,CaOやFeOが多い。その原因は、(1)河川の懸濁物質に含まれていたCaイオンはpH9の霞ヶ浦に流入すると石灰岩境界を越え、沈殿する。その結果、湖水の懸濁物質はCaに乏しくなる。(2)FeOは霞ヶ浦に流入すると高いpHにより沈殿し始める。その結果、湖水の懸濁物質はFeに乏しくなる。(3)中性の河川水では不溶性だったAl(OH)3はアルカリ性の湖水ではAlの親和性が増して溶解し始め、コロイド化する。その結果、湖水の懸濁物質はAlの多い粘土鉱物に変化する。底質の粘土鉱物の捲き上げも起こりやすくなる。