抄録
衝撃溶融を経験した隕石,2つのHコンドライトのうち,Y-791088のガラス部分は,K成分の異なる2種類のガラス質相からなり,もう一つのLAP 02240に含まれるガラスは均質である.両者の差異の原因を明らかにし,母天体での地質学的位置づけを理解するため,LLコンドライトの衝撃溶融岩Y-790964および衝撃を受けていない非平衡コンドライトY-82038(H3.2-3.4)との比較を行なった.Y-790964のガラスはY-791088と同様の特徴を示し,Y-82038に含まれるガラスはK成分に不均質性が見られた.このことはY-791088に観察されたK成分の違いが衝撃を受ける以前のK成分の分布を保持していることを示唆し,高温による衝撃溶融による均質化を経験しなかったと考えられる.一方,LAP 02240に含まれるガラスの組成は均質であるため,高温での衝撃溶融時に流動したことを示唆している.