抄録
阿蘇火山の15万年前から9万年前の3つの大規模噴火活動に関して,主として,地球化学的データをもとに,珪長質および苦鉄質マグマの成因を調べた.各大規模噴火活動において,珪長質マグマと苦鉄質マグマは,直接の分化関係は持たないが,同一の期限物質より生じたことが明らかになった.阿蘇火山の,珪長質および苦鉄質マグマの成因は,下部地殻ハンレイ岩が,マントル由来の高温マグマが貫入したことにより,部分溶融し,その部分溶融度の違いにより生じたものとして考えられる.高い部分溶融度のメルトが生じ,その後分化したものが,苦鉄質マグマであり,低い部分溶融度のメルトが分離して珪長質マグマになった.この2種類のマグマ生成は,各大規模噴火毎に起こった.