抄録
岩石,土壌から地下水,河川水への重金属類の移行プロセスにおいて,水との相互作用は極めて重要である.中でも,岩石,土壌中の元素の存在状態は,水圏への移行し易さと密接な関係があり,これらの検討にあたり,酸化剤や還元剤,酸による構成鉱物の溶解度の差を利用した逐次抽出法が考案されている.しかし,抽出法による有害元素などの化学形態の特定は土壌に対しては広く適用されているものの,岩石に対する抽出法の検討は充分になされてはいない.そこで,本研究では,堆積岩類の粒径と重金属類の溶出挙動との関係を実験的に明らかにする.実験結果で最も重要な点は,岩石を粉末化することにより,水抽出中に再吸着反応が起こりやすくなるということである.そして,再吸着された重金属類は,希硝酸という強力な試薬を用いないと再溶出はされない.この現象は,すべての堆積岩種で生じるわけではない.しかし,重金属類の環境への溶出の危険性を考える際,“溶出する可能性のある元素”を過小評価し,“溶出する可能性の低い元素”を過大評価することになるため,リスク評価を大きく誤る恐れがある.