抄録
土木工事で発生する掘削ずりからの重金属類等の溶出が問題となる事例が近年報告され,東北新幹線八甲田トンネルでも掘削ずりからのこれらの溶出が懸念された.このため,当トンネルでは岩石の溶出特性評価により掘削ずりを分別し,酸性水等が溶出しうるずりは「管理型土捨場」に処分した.この「管理型土捨場」からの浸出水について,水質のモニタリングを行った.処分場内の掘削ずりの岩石学的特徴と浸出水水質から処分場内部で生じた岩石-水相互作用について検討した結果,浸出水の主要イオンモル濃度の比は黄鉄鉱と斜長石の溶解により説明できることがわかった.一方,ずり中では主に黄鉄鉱の不純物として含まれると推定される重金属類等が黄鉄鉱の溶解が推定されるにもかかわらず浸出水中では非常に低濃度であることから,これらのずり処分場内部における岩石への吸着が考えられる.また,これらの検討結果をPHREEQCによるマスバランス計算で検証した.